2021/09/16
SDGs(持続可能な開発目標)とは?
17個の目標、日本での取り組みについて解説
17個の目標、日本での取り組みについて解説
SDGs(持続可能な開発目標)は、2030年まで達成すべき項目として国連で採択された世界共通の目標です。先進国・発展途上国を問わず、以下のような課題に対処することが求められています。
・貧困・飢餓・教育格差などの解消
・エネルギーや資源の有効活用
・働き方の改善や不平等の解消
・環境汚染の防止
SDGsはシンプルかつわかりやすく体系化されていることもあり、今では日本国内でも大注目を集めていますが、その主旨や目標をきちんと理解されているでしょうか?
この記事では、SDGsの概要や必要となった背景、各目標の大まかな内容、日本で推進されている取り組みなどについて解説していきます。
SDGsとは
SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」を略した言葉です。簡単に説明すると、これからの地球を守るために「2030年までに達成すべきこと」として国連で採択された世界共通の目標を指します。この目標は全部で17個あり、各目標をさらに細分化すると169個ものターゲットから構成されています。
SDGsは2015年9月の国連サミットで提案・採択されましたが、その前身として2001年策定のMDGs(ミレニアム開発目標)があります。MDGsで定められた8個の目標と21個のターゲットは、おもに発展途上国の貧困撲滅を目指して設定されており、あくまでも政府やNGOが主体となって取り組みを進めていました。そのため、具体的な目標を提示しても、一般の人々は当事者意識を持ちにくかったのです。
それに対してSDGsは、先進国の問題も含め全ての国が取り組むべき普遍的(ユニバーサル)な目標となっています。また、これらの目標は、各国政府による取り組みだけでは達成が困難であり、企業や地方自治体、そして一人ひとりに至るまで、すべての人の行動が求められている点がSDGsの大きな特徴です。
SDGsが必要となった背景と3つの側面
なぜSDGsという目標を設定する必要があったのか、その背景と3つの側面について解説していきます。
◇SDGsが必要となった背景
SDGsは「世界が直面する課題を社会・経済・環境という3つの側面から捉え、17のゴールを統合的に解決しながら、持続可能なよりよい未来を築くことを目標とするもの」です。
SDGsの発端は、18世紀に起こった産業革命とされています。産業革命以降、テクノロジーは大きな発展を遂げ続けており、人々の活動もますます活発化している状況です。しかし、この急激な変化によって、経済・社会を根底から支える「地球の持続可能性」が揺らいでいます。
実際、1972年にアメリカの環境学者デニス・メドウズ氏たちが発表した報告書「成長の限界」では、地球の資源をこのまま浪費し続けていては、100年以内に世界経済の成長が限界に達すると提言されています。また、1987年に環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)が発表した報告書「我ら共有の未来」では、持続可能な開発というコンセプトが定義されましたが、これがSDGs誕生の背景にあります。
◇持続可能な3つの側面
SDGs(持続可能な開発目標)を達成するための条件として、国連は「経済成長」「社会的包摂」「環境保護」という3つの側面(主要素)を調和させる必要があると定義しています。
わかりやすい言葉に置き換えて説明すれば「経済の発展・心身の満足感・地球環境のバランスをとる」ということです。
・経済の発展(貧困の人を減らしつつ、経済成長を実現させる)
・心身の満足感(差別のない平和な社会を築きながら、国家や企業の評判も高める)
・地球環境(環境破壊を阻止しながら、経済活動を活発化させる)
これらのバランスをとりつつ、国家や企業がきちんと活動できるような状態を目指します
【SDGsの17の目標】1~6
SDGsはターゲットまで細分化すると膨大な項目数になりますが、目標だけであれば17個と、一通り把握できる範囲の数でしょう。
そこで、SDGsにおける17の目標をテーマ別に紹介していきます。目標1~6は健康な生活や社会福祉、基本的人権など発展途上国に関する問題がメインテーマです。
◇1.貧困をなくそう
「世界中のあらゆる場所で起こっている、あらゆる形態の貧困を終わらせる」という目標です。貧困層・脆弱層に対する社会保護やサービスの提供、発展途上国に対する開発協力の強化など、貧困撲滅に向けた取り組みを推進します。
◇2.飢餓をゼロに
「飢餓を終わらせて、食料の安全保障や栄養不良の解消、持続できる農業を促進する」という目標です。
誰もが栄養のある食事を得られるようにするとともに、農業生産性や所得を増やしたり、農産物市場における貿易制限を是正したりするなど、農業に携わる人々をサポートします。
◇3.すべての人に健康と福祉を
「年齢・性別を問わず、あらゆる人々の健康的な生活を確保するとともに、福祉を促進する」という目標です。
妊婦や新生児の死亡率低下、エイズ・マラリア・結核・それ以外の感染症の根絶などを目指します。また、医薬品の研究開発や保健人材の採用に関する取り組みも行ないます。
◇4.質の高い教育をみんなに
「あらゆる人々に包摂的・公平・高品質な教育を提供して、生涯学習の機会を促進する」という目標です。初等教育・中等教育・高等教育を受けるための体制整備、読み書きや計算能力の習得、障がいやジェンダーに配慮した教育などを推進します。
◇5.ジェンダー平等を実現しよう
「ジェンダー平等を達成して、あらゆる女性・女児が性差別なく活躍できるようにする」という目標です。女性・女児に対する不当行為を排除するとともに、社会への参画や能力向上の促進施策も行ないます。発展途上国だけではなく、先進国にとっても重要な目標といえるでしょう。
◇6.安全な水とトイレを世界中に
「あらゆる人々が安全な水、および衛生的なトイレにアクセスできる状態にする」という目標です。水不足や不衛生な環境に悩む人々を減少させるため、上下水道や衛生管理施設を整備したり、水の利用に関する技術促進などを行なったりします。
【SDGsの17の目標】7~12
SDGsの目標7~12については、エネルギーや技術革新など先進国にも深く関わってくる問題がメインテーマです。私たちにとって身近な内容が多いので、比較的イメージしやすいでしょう。
◇7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
「あらゆる人々が持続可能で信頼性の高い、近代的エネルギーにアクセスできる状態にする」という目標です。再生可能エネルギーやクリーンエネルギーに関する研究開発の強化、エネルギー効率の改善といった取り組みを推進します。
◇8.働きがいも経済成長も
「持続可能な経済成長・完全かつ生産的な雇用・人間らしい雇用(ディーセントワーク)を実現する」という目標です。
経済生産性の促進や同一労働同一賃金の達成、金融サービスの拡大などに向けた取り組みを行ないます。また、強制労働や児童労働といった不当な労働環境の撲滅、後発開発途上国に対する支援なども実施します。
◇9.産業と技術革新の基盤をつくろう
「強靭なインフラを構築するとともに、持続可能な産業化の促進・技術改革の拡大を図る」という目標です。
信頼性と持続性に優れたインフラを整備したり、雇用・GDPに占める産業セクターの割合を増加させたりして、産業改善や雇用創出につなげます。また、技術革新に向けた取り組みとして、イノベーションや研究開発に対する支援も行ないます。
◇10.人や国の不平等をなくそう
「国内や国家間における不平等、および格差を是正する」という目標です。人種・民族・宗教・性別などに関わらず平等な扱いを受けられるようにする、所得成長率を成長・持続させる政策を導入するといった取り組みを推進します。
◇11.住み続けられるまちづくりを
「強靭かつ持続性に優れた都市、および人間居住を実現する」という目標です。あらゆる人々に安全・安価な住宅を提供してスラム街を改善させたり、災害に対するリスク管理を行なったりして、人的損失や経済的損失を未然に防ぎます。
◇12.つくる責任つかう責任
「持続可能な生産・消費の仕組みを作る」という目標です。自然環境に悪影響を与える化学物資の管理・抑制、リユースやリサイクルによる廃棄物の大幅削減、フードロスの削減などに向けた取り組みを行ないます。
【SDGsの17の目標】13~17
SDGsの目標13~17は気候変動や生物多様性、世界平和などグローバルな問題をメインテーマに据えています。今まで紹介してきた目標よりスケールは大きくなりますが、内容自体はそれほど難しくありません。
◇13.気候変動に具体的な対策を
「気候変動に対する緊急対策を講じる」という目標です。異常気象や自然災害への強靭性・適応力を高めるとともに、気候変動に関する教育を行なったり、対策を立案・実行するための体制を作ったりするなど、多角的な取り組みを実施します。
◇14.海の豊かさを守ろう
「海洋資源を保全するとともに、持続可能な形で管理・利用する」という目標です。海洋汚染を防止することはもちろん、漁獲量の規制や違法漁業につながる補助金の撤廃といった取り組みも行ないます。
◇15.陸の豊かさも守ろう
「陸上生態系を持続可能な形で管理・保護して、土地の劣化や生物多様性の損失を防ぐ」という目標です。砂漠化した土地を回復させる、保護対象に含まれる動植物の密漁・違法取引を撲滅する、外来種の侵入を防ぐなどして陸上生態系を守ります。
◇16.平和と公正をすべての人に
「平和な社会を実現するため、あらゆる形態の暴力を排除するとともに、あらゆる人々が司法にアクセスできるようにする」という目標です。暴力的行為や犯罪行為の撲滅、基本的人権の保障、透明性が高く説明責任を果たせる公的機関の構築といった取り組みを推進します。
◇17.パートナーシップで目標を達成しよう
「持続可能な開発を実現するため、実施手段の強化とグローバル・パートナーシップの活性化を図る」という目標です。資源・資金の動員強化やテクノロジーの知識共有、貿易体制の構築などを通じて開発途上国を支援します。
日本企業のSDGsへの取り組みを紹介
SDGsへの取り組みは日本の有名企業でも実施されているため、その事例もいくつか紹介していきます。事業内容も踏まえながらチェックしてみてください。
◇アート引っ越しセンター
紙資源なしで梱包できる「エコ楽ボックス」を使用し、ダンボールのリユースを行うなど、ゴミゼロの引っ越しを実現するため、目標12「つくる責任つかう責任」に沿った取り組みを推進しています。
また、二酸化炭素や窒素酸化物の排出量が少ない「グリーンディーゼル車」の導入により、環境に配慮したエコドライブを実現させていることも特徴的です。こちらは目標13「気候変動に具体的な対策を」に該当します。
◇NEC(日本電気株式会社)
企業として培ってきたICT(情報技術通信)を最大限に活かしグローバルかつ幅広い分野で、様々なSDGs貢献をしています。例えば、発展途上国においてはワクチン普及を目的として指紋認証技術の有効性を検証しています。これは、目標3「すべての人に健康と福祉を」に該当します。
また、デジタル化で気候変動等に柔軟に対応するサスティナブルな農業の実現や、AIの需要予測により食品ロス削減に向け「需給最適化プラットホーム」展開するなど幅広い目標に該当する取り組みを行っています。
◇パナソニック株式会社
スマート家電や太陽光発電を活用したサスティナブル・スマートタウンなど、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や目標11「住み続けられるまちづくりを」に当てはまる取り組みを推進しています。
さらに、投入資源の削減や製品リサイクルといった環境への配慮、ディーセントワークの確保、模倣品排除による犯罪抑制など、目標8「働きがいも経済成長も」や目標12「つくる責任つかう責任」に関する取り組みも幅広く実施しています。
SDGs達成のために私たち企業ができること
企業としてSDGsに取り組むことで、地球環境の配慮だけではなく、企業イメージの向上やSDGsの実現につながる新しいサービスなどが創出されるようになります。以下で、企業が行なっている事例もいくつか紹介するので、SDGsに取り組む際の参考にしてみてはいかがでしょうか。
◇省エネの推進
エネルギーの使用状況を見える化し、使用エネルギーの無駄を見つけて対策を行なう。また、自家消費型太陽光発電システムの導入や空調機温度制御等、様々な省エネ対策の組み合わせでCO2排出量の削減にもつながります。
◇リサイクルなど環境配慮型製品の採用
環境に配慮した事業を推進する企業と取引先とすることで、サプライチェーンにおける脱炭素化の貢献につながります。
参考:ソーラーフロンティア プレスリリース
「ソーラーフロンティア太陽電池モジュールリサイクル技術実証、NEDOによる採択が決定」
太陽光発電を活用する
太陽光発電システムは、製造時にエネルギーを必要としますが、発電時には燃料を一切必要としません。導入することで二酸化炭素の排出量削減につながり、地球に優しい環境配慮型のエネルギー源と言えます。
まとめ
SDGsは国籍や人種を問わず、地球上の生き物すべてに関係している目標です。目標を達成するためには、企業や一人ひとりが必要な知識を学んで、なおかつ行動に移す必要があります。
実際、企業として実践できる取り組みは数多くありますが、特に注目したいものが太陽光発電です。再生可能エネルギーを使うことでエネルギー消費量を削減できるため、スマートシティの取り組みでも大いに活用されています。
気になる方は、以下の資料から詳細をチェックしてみてください。
参考:外務省 SDGsの概要及び達成に向けた日本の取組に関する基礎資料
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/sdgs_gaiyou_202103.pdf